スーパースター3期の始まり方予想

 

🎧「そ、それで留学もなくなったと……」
🐙「はー!? そんなのそっちの都合で、かのんちゃんは被害者じゃないですか!」
姉『お詫びするしかありません!』
🐙「詫びられたところで……せめて代わりの学校にねじ込むとかできないんですか!?」
🎧「ちぃちゃん! そんな方法で夢を叶えても嬉しくないよ!」
🐙「あ……ご、ごめん」
🪐「まあ、私も話がうますぎるとは思ってたのよ。
 予選突破しかしてない状態で、一介の高校生を海外から招へいなんて」
🍨「今さら何を言ってるデスか。その通りデスけど」
姉『金銭的被害については補償いたしますので……』
🥤「チャンスですの! 10万くらい吹っ掛けても許されるんじゃないですの?」
🦊「夏美ちゃん少し自重するっす」
🎧「元々全額向こう持ちって話だったから、別に被害はないよ」
姉『そのう……今回のことは、マルガレーテは何も与り知らぬことです。
 姉として虫のいい話ですが、妹は責めないでいただけると……』
🦋「その通りよ。私は悪くないから謝らないわ」
姉『多少はしおらしくしておきなさいよ!
 はぁ……母も父もやり方は間違ったけど、あなたを心配したのは本当よ。
 圧倒的な才能のあるあなただけど、その歳であまりにも世間と隔絶しすぎた。
 だからこそ、学生が手作りで行っているスクールアイドルに触れさせたのよ』
🦋「ふん……」
🐾「確かに、お前みたいなやつにはスクールアイドルが一番だぜ」
姉『澁谷さんに目を留めたのはたまたまだったみたいだけれど。
 何にせよ学院も混乱の極みで、当分はあなたが戻れる場所じゃない。
 もう一年間、日本で過ごしてちょうだい』
🦋「分かってるわ。一年経ってから、姉さんが改革した学院に戻るつもり」
🧪「余計なお世話だけど、お姉さんの立場は大丈夫なの? ご両親が解任されて」
姉『確かに白い目で見られていますが、それでもやらねばなりません。両親を告発したのは私なのですから』
☕「ええ!? 自分の親をですか!?」
姉『身内の罪は身内がそそがなくては』
☕「そ、そうですよね。ご立派です」
姉『澁谷さんも、これに懲りず我が校を目指していただけるなら歓迎しますし、同等の他校が良ければご案内はします。
 いずれにせよ、正規の試験を受けて合格すればの話になります』
🎧「は、はい……どうするか考えてみます」
もう一度深々と頭を下げた姿を最後に、ウィーン姉との通信は切れた。
徒労感が漂う部室に、しばらくして夏美の元気な声が響く。
🥤「いやー、こんな経験はめったにできませんの。
 これは動画にまとめるべきですの。鬼バズりますの~!」
🎧「あはは……夏美ちゃんはたくましいなあ」
☕「かのんさん、ひとまず理事長のところへ行きましょう。事実ならあちらにも連絡があるはずです」
🦋「私も行くわ」

 

<理事長室>
理「こちらにもお詫びがありました。澁谷さんは振り回してしまったわね」
🎧「いえ……」
理「でも仕方ないじゃない!? 書類から何から正式なものだったんだし!
 まさか向こうの理事長がイカれてるとは思わないわよ!」
☕「まあまあ。マルガレーテさんの前ですから」
🦋「別に気にしないわ。それより一年間はこの学校に世話になるわよ」
理「あなたのような優秀な生徒は歓迎よ。もちろん編入試験は受けてもらうけど」
🦋「この程度の学校、私が落ちるわけがないわ」
🎧「それでもう制服買っちゃったの? 気が早いなあ」
☕「音楽科ですよね! ぜひ音楽科へ!」
🦋「ま、まあ、少しでもカリキュラムは高度な方がいいわね」
🎧「ははは……今日はもう帰るね。荷ほどきしなきゃ」
☕「あ、はい。皆にも本日は解散と伝えます。どうか気を落とさずに……」

 

🎧(幻に終わったとはいえ、留学なんて考えたこともなかった私が、今回の件で真剣に考えたのは確か)
🎧(世界に歌を響かせる――)
🎧(その夢は棚ぼたで叶うものじゃなく、やっぱり厳しい道なんだ)
🎧(もう一年の猶予ができたと思って、しっかり進路を決めないと)

 

<部室>
☕「可可さん。まだ帰られないのですか」
🍨「レンレン……可可は悪い子デス。
 本心では、最後の一年をかのんと一緒にいられて嬉しいのデス」
☕「そ、それは私もですし、皆も多かれ少なかれそうだと思いますよ。
 いえ、むしろ暗い顔をしているより建設的ではないですか。
 かのんさんが留学せずに済んで良かったです! ばんざーい!」
🍨「い、いいんデスかね? ばんざーい!
 可可もようやく、帰国させられる不安のない一年間になるのデス。
 まあ今度は卒業が迫っていマスが、それはどんなグループも同じ。
 限られた時間で、心の底からスクールアイドルを楽しみたいデス!」
☕「はい……私も、優勝して結ヶ丘の名は知られましたし、もう学校の心配はありません。
 最後は私自身のために、思う存分活動したいですね」
🍨「やりマショウ、レンレン!」
☕「はい、可可さん!」

 

たこ焼き屋
🐙「………」
🪐「まーだむくれてんの?」
🐙「すみれちゃんが来るなんて珍しいね。何の用?」
🪐「無愛想な店員ねえ。客なんだから愛想良くしなさいよ」
🐙「まいどー。500円になりまーす」
🪐「はい。ま、少しほっとしたわよ。
 完全に置いてかれたのかと思ったら、単なる誤解で。
 まだ私にも勝ち目はあるってことね」
🐙「未だにライバル視してたんだ」
🪐「あの名刺のことを忘れるわけないでしょ。
 私も3年生。そろそろ本気出してショウビジネス界への復帰を図るわ。
 かのんより先に夢を叶えてやる」
🐙「そっか……応援するよ」
🪐「いらないわよ。それよりアンタはどうなのよ」
🐙「私?」
🪐「世界的なダンサーになろうとか、そういう願望はないわけ?
 かのんの夢はアンタの夢じゃないのよ」
🐙「私は……。
 分かってるよ。それくらいの夢を持たなきゃ、かのんちゃんの隣に立つ資格はないって」
🪐「結局かのんが理由かいっ。
 ま、それなら人の背中は見てないで、自分で未知の世界を切り開かなきゃね」
🐙「はいはい、すみれちゃんはお節介だなあ。たこ焼きお待たせ」
🪐「ん。私はアンタにも負けないわよ」
🐙「……毎度ありがとう」

 

<公園>
🐾「私としてはスクールアイドル界の今後を憂えるところだぜ」
🧪「どういうこと?」
🐾「かのん先輩が残った上に、マルガレーテまで入ったら、Liella!が一強すぎるじゃねーか」
🥤「確かに! ラブライブも盛り上がりませんの。
 スラムダンクで言うなら山王工業、黒子のバスケなら帝光編ですの」(中の人ネタ)
🧪「ふむ。どうせLiella!に勝てないからと、活動を諦める子も出てくるかもしれないと」
🐾「可可先輩にもさっき相談したんだけどさ。
 『そんなことはありマセン! スクールアイドルを愛する子なら、変わらず情熱を燃やすはずデス!』と、こうなんだよ」
🧪「皆が皆、可可先輩みたいに強いわけじゃないのに……。
 とはいえ、私たちがそれを心配するのは、何様のつもりかと言われるかもしれない」
🐾「そうなんだけどさ……」
🦋「フッ! 雑魚がガン首を揃えて、つまらない悩みを抱えているようね」
🥤「お。パワーバランスの破壊者が参上ですの」
🦋「そもそも私は、澁谷かのんと組むとは言ってない。
 かのんの下で学べと言った両親への尊敬は地に落ちたことだし」
🧪「そうなの? じゃあソロで活動するの?」
🦋「それでは昨年と変わらないし、姉さんの心配は解消されないわ。
 ということで、あなたたち4人と組んで澁谷かのんたち5人を倒そうと思うの」
🥤「はー? 何言い出しやがってんですの」
🐾「マルガレーテ、てめぇ……。
 なかなか気が合うじゃねーか」
🧪「メイ!?」
🥤「し、正気ですの? あの5人の信者であるメイが」
🐾「だからこそだ!
 去年散々言われた実力差の件、優勝したことでうやむやになったが、別に越えられちゃいない。
 このまま先輩たちの卒業を見送るだけでいいのか?
 来年になったら確実に、ショボくなっただの弱体化しただの言われるぞ。
 Liella!を継ぐ者としてそれでいいのか!?」
🦋「ふふん、意外と骨があるじゃない。
 でも勘違いしないように。私にとってあなたたちは、あくまで丁度いいハンデよ」
🐾「そうかいそうかい。実力で認めさせてやるぜ」
🥤「うーん、確かに一強状態よりは盛り上がりそうですの。再生数も回りますの~」
🧪「ラブライブに一校から2グループ出ていいの?」
🐾「認められてる。あの伝説の音ノ木坂学院
 高坂穂乃果と高坂雪穂の、東京予選での姉妹対決は今でも語りぐさだぜ」
🧪「もう一点。新入部員の子にとっては、部内が分裂していたら可哀想では?」
🐾「そ、それは……そうだな。悪い、マルガレーテ。どんな奴が来るか分かるまでは保留にしてくれ」
🦋「チッ、仕方ないわね」
🧪「気弱な子ならこの話は無しで」
🥤「あの子だったら、むしろ乗ってきそうですの」
🧪「ん? 心当たりでもあるの?」
🥤「こ、こっちの話ですの。それときな子の意向も聞かないと」
🦋「そういえば一人足りないじゃない」
🐾「今頃気付いたのかよ。かのん先輩に用があるからって、一人で帰ったよ」

 

<喫茶店前>
🦊「かのん先輩!」
🎧「あ、きな子ちゃん……」
🦊「その……落ち込んでるところに、こんなこと言うのは申し訳ないんすけど」
🎧「別に落ち込んではいないよ。これからどうしようか考えてただけ」
🦊「なら良かったっす。
 きな子は、もっともっとかのん先輩に教わりたいことがあるっす!」
🎧「え……」
🦊「この一年間は優勝こそできたものの、みそっかすのきな子は着いていくだけで精一杯。
 ほとんど余裕はなかったっす」
🎧「そ、そっか。そう思わせちゃったなら、私は先輩として失格だね」
🦊「いえっ、二兎を追うのは何とやらで、優勝できたんだから贅沢は言えないっす。
 なので一年延びた今こそ、二兎目を追いたいっす。
 かのん先輩の先輩としての姿、生き方を学んで、来年はきな子が最上級生として部を引っ張りたいっす!」
🎧「きな子ちゃん……。
 思えば一年前、初めて先輩って呼んでくれたね。
 たったの一年間でお別れすることにならなくて、良かったのかもしれない。
 まだ私も結ヶ丘の一期生として、できることがあると思うから」
🦊「はいっ。そして今度こそ、先輩の夢を叶えてほしいっす。
 その頃にはきっと、きな子も一生の夢を見つけてるっす!」
🎧「うん――簡単に叶うものでないと分かった以上、私も必死にやってみるよ。
 でも今日のところはあの時みたいに、うちでお茶でも飲んでかない?」
🦊「ご馳走になるっす~」
二人が中に入り、喫茶店の扉は閉じる。