ラブライブ!スーパースター!!2期3話がこうだったら良かったのにという妄想


🎧「基礎は身についたし、次はきな子ちゃんのデビューライブを考えないとね」
🦊「デデデデビューっすか? 緊張するっす……」
🍨「誰しも通る道デス。きっと素敵な思い出になりマスよ!」
☕「代々木フェスが今年も開催されるようです。規模は小さめですし、丁度よいかもしれませんね」
🐙「待って。念のため確認しておくけど。
 きな子ちゃんを入れた6人のライブは、今までの5人のライブより、完成度はどうしても下がる。
 失望するファンもいるかもしれない。
 それを覚悟の上で、きな子ちゃんを出すということでいいね?」
🦊「え……」
🪐「ち、ちょっと千砂都。そういう言い方はないでしょ」
🐙「別に反対してるわけじゃない。
 きな子ちゃんは圧倒的に経験が足りないし、場数を踏ませるのは大事だよ。
 その上で、ファンからの反応は覚悟しておいてねという話」
🦊(た、確かに色々言われるのは怖いっす……)
🦊(でも全力で挑むことが大事だと、この前自分から言ったばかり!)
🦊(デビューだって、先延ばしにして何か解決するわけでもないっす)
🦊「分かりました、きな子もどうか出してください!」
🎧「よく言った! じゃあランニングも兼ねて、会場の下見に行こうか」

🍨「あのステージ上で、クーカーは最高の初ライブをやり切ったのデス」
🦊「動画で見させていただいたっす。素晴らしかったっす~」
☕「確かに、新人特別賞も納得でしたね」
🎧「あれ。恋ちゃんも動画で見てくれたの?」
☕「え、その、実は……。
 お二人が気になって、あそこの柱の陰におりました」
🍨「そうだったんデスか!?」
🐙「なーんだ、声かけてくれればよかったのに」
☕「い、いえ、その節は大変申し訳なく……」
🦊「?」
☕「きな子さんにもいずれお話しします。
 私が言うのも何ですが、停電のトラブルがありながらお見事なライブでした」
🎧「ちぃちゃんが照らしてくれたおかげだよ」
🐙「えへへ、役に立てて良かったよ」
🪐「へー、停電なんてあったのね。……あ゛」
🍨「あ? あって何デスかすみれ」
🪐「あ、あははは…………ごめんなさい!」

🎧「あれってすみれちゃんだったの……」
🍨「まあ、結果として緊張が解けたから別に良いデス」
🪐「そ、そっかー。いやー、ずっと心に引っかかってたのよねー」
🍨「今の今まで忘れてたじゃないデスか!」
☕「電気は危ないですから、次からは大人を呼んでくださいね」
🪐「はあい」
🦊「かのん先輩と可可先輩でも緊張したんですか?」
🎧「そりゃあするよ。私なんて、今のきな子ちゃんより遥かにメンタル弱かったんだから」
🦊「そうなんすか!?」
🍨「それでも、応援してくれるファンの姿を見たら、勇気が湧いてきたのデス」
🐙「ましてや今回は、頼れる先輩が5人も同じステージにいるわけだし、ね」
🦊「は、はいっす!」
☕「あら? メールが……」

スマホを見た恋の顔が、困惑の色に変わる。

☕「代々木フェスの運営の方から、Liella!を特別招待枠とし、大トリを任せたいと……」
一同『ええ!?』

帰途につきながら悩むメンバーたち。

🐙「うーん、光栄な話ではあるんだけど」
🦊「やはり優勝候補として注目されてるんですね……。きな子の練習台にしたら駄目だったっす」
🍨「いや! そうやって右に左にフラフラするのが一番良くありマセン」
🪐「そうね。代々木の運営さんには心苦しいけど、私たちの最終目標はあくまでラブライブ
 それ以外の結果については割り切るのも大事よ」
☕「決して手を抜くわけではありません。
 私たち6人でできる最高のライブを行えば、見る方は分かってくれますよ」
🦊「は、はいっす」

帰宅してからもまだ少し悩んでるかのん。

🎧(でも大注目のトリで、万一にもきな子ちゃんが大失敗したら、一生もののトラウマにならないかなあ)
🎧(私はなったし……)
🎧(うう……でもそれを恐れてステージに上げなかったら、ずっと場数なんて踏めない)
🎧(可可ちゃんの言う通り、フラフラするのが一番良くないか。初志貫徹!)

ウィーンとのやり取りは本編と同じ。

本番に向けて練習を重ねるLiella!。

🐙「今の実力に合わせた振り付けだから、しっかり練習すれば問題ないからね」
🦊「はいっ!」
🐙(だいぶ難易度は落としたけど、でもサニパは来ないし。
 去年と同レベルのフェスなら、優勝の可能性も十分あるかな?)

そして迎えた当日。練習ではミスなくこなせるようになり、きな子も落ち着いている。
出番待ちの間、他校のライブを見て熱心に勉強するきな子。
が、ウィーンの出番が来て顔色が変わる。

🦊(こっ……これが本物の『才能』……)

🎧「ど、どうしたのきな子ちゃん。青ざめてるよ!?」
🦊「急にきな子が場違いに思えてきたっす……」
係員「Liella!さん、準備お願いしまーす」
☕「は、はい、ただいま」
🪐「ね、ねえ。やっぱり休んでた方が」
🐙「ここで逃げたら何にもならないよ! 大丈夫、いける!」
🍨「客席にも結女のみんなが来てマス!」
🦊「は、はいぃ……」

だがウィーンのライブに飲まれたきな子には、観客のペンライトも遠くの世界に感じる。
何とか練習の成果で、ライブを壊すほどの大失敗はなかったものの。
歌詞忘れ1回、立ち位置間違え1回、振り付け間違え2回のミスを重ねて初陣を終えた。


🦊「……申し訳……なかったっす……」
🐙「最初から覚悟の上だったでしょ? 経験値を得る目的は十分達成できたじゃない」
🪐「そうだけど、皆が皆千砂都みたいな鋼メンタルじゃないっつーの!」
☕「とにかく今日はゆっくり休んでください。悔しいのは本気の証です」
🍨「ツイッターエゴサとかはしちゃ駄目デスよ」
🦊「はい……」
🎧「きな子ちゃん……」

特別賞の盾を夜空に掲げ、並んで帰る可可とかのん。

🍨「去年はあんなに嬉しかった賞が、今年は何だか悔しいとは。
 本当に人間の欲とは、際限がないものデス」
🎧「そうだね。でも、高みに向かっている証だと思いたいね。
 スクールアイドルをやるだけでは満足しない道を、私たちは選んだんだから。
 何にせよ今は私たちの気持ちより、きな子ちゃんを何とかしてあげないと」
🍨「その通りデス。明日は二年生の皆で相談しまショウ」

翌日の一年生の教室では、きな子が腫れ物のように遠巻きに気遣われている。
唯一Liella!に興味のない夏美は、事情が分からずメイに尋ねる。

🥤「ねえ米女さん。朝から何度も桜小路さんを見てばかりいるけど」
🐾「ばっ、何のことだよ。因縁つけてんじゃねー!」
🥤「うわ凶暴ですの。ほかの人に聞きますの」
🐾(……ないとは思うけど、桜小路を悪く言う奴に当たるとまずいな)
🐾「ちょっと耳貸せ」
🥤「ふうん、ライブでミスをねえ」
🧪「いきがかり上、一般的なライブデータを調べてみたけれど。
 新人のデビューライブではよくあるミスの範囲。特段大きいわけじゃない」
🐾「とはいえ年下が一人で超スゲーパフォーマンスを見せてたから、やっぱ心情的にはな」
🥤「ったく世話の焼ける」

きな子の前に行って、ばんと机に手を置く夏美。

🥤「投資では損切りが大事!」
🦊「へ? そんき……え?」
🥤「諦めるときはきっぱり諦めなきゃ、逆に大損するということですの。
 トータルで勝てばいいんですの!」
🐾「そうだぜ。ライブの失敗はライブの成功で取り返すしかねー」
🦊「分かってるっす。でも次も失敗したら……」
🥤「何度暴落しようが、値上がりまで持ち続ければ絶対勝ちますの!」
🧪「無限回試行すれば理論上は成功に収束する」
🦊「こ、言葉の意味はよく分からないけどすごい自信っす」

昼休みに部室で相談している先輩たち。

🪐「とにかくきな子に成功体験をあげなさいよ! こういうの辛いったら辛いのよ!」
🍨「自分を重ねるのはやめるデス」
🎧「あげたいのは山々だけど、昨日の今日だよ? 少し間をおいて……」
🦊「いえ! きな子はいつでもOKっす!」
二年生『きな子ちゃん!?』
🦊「ちょっと覚悟は足りてなかったけど、せめて打たれ強くありたいっす。
 それに何もしなければ、『Go!! リスタート』は昨日の不完全な形で世に出たままです。
 これじゃ曲が可哀想っす!
 練習ではできてるんだから、完全版を見てもらわないと浮かばれません!」
🎧「うん……」
🐙「ほーら、心配なかったでしょ。強い子だって私は知ってたよ」
🪐「ぐぬぬ。ならいいけどっ」
🍨「ではリベンジライブデスね! どこでやりマスか?」
☕「体育館で、校内ライブがよいと思います。
 完璧に成功するまで、生徒の皆さんには何度でも付き合っていただきましょう」
🦊「そ、それならいつかは成功しますけど、いいんですかね?」
☕「私たちは結ヶ丘の誇りと思っていただいていますが、孤高である必要はないと思うのです。
 時には弱みを見せ甘えられるのも、プロにはないスクールアイドルの特権です。
 きっと皆さん、きな子さんの成長のために協力してくださいますよ」

再度練習を重ね、そしてリベンジライブ当日。
恋の校内放送で、放課後の体育館に生徒たちが集まってくる。

🐾「鬼塚も行くだろ? クラスメイトのよしみで!
 いやー私もクラスメイトのよしみでさあ」
🥤「暇ではないんですけど。ま、乗りかかった船ですの。
 若菜さんも興味ありますの?」
🧪「私はメイの行くところに行くだけ」

ステージ上で、かのんから代々木フェスのお礼と、本日の趣旨が語られた。

🐾(何で急に校内でと思ったけど、桜小路のリベンジのためだったのか。
 大事にされてるじゃねーか、さすがLiella!)

きな子も客席にクラスメイトの姿を認め、安堵と同時に気を引き締める。

🦊(歌い出しを任せてもらい、テンポも少し遅くして、振り付けの難易度も下げてもらった曲。
 きな子のデビューのための曲。
 成功するまで何度やってもいいとはいえ、甘えてばかりじゃいけないっす。
 常に一度きりのチャンスと思って、神経を研ぎ澄ませないと!)
🎧「それでは聞いてください、『Go!! リスタート』」

ライブシーン

なやこ「ミスなし!」「一発OK!」「やったねきな子ちゃん!」
🦊「はぁはぁ……ほ、本当にできてたっすか?」
🍨「隣で踊ってても、すごい集中力が伝わってきマシタ!」

生徒たちの温かい拍手に包まれ半泣きのきな子に、恋は目を潤ませ、千砂都はうんうん頷いている。
かのんも嬉しいながらも、少しばかり困り笑いを浮かべた。

🎧「それにしても速攻で成功して、逆に時間余っちゃったね」
🪐「みんな、もっと聞きたいかしらー!?」
生徒『アンコール! アンコール!』
🦊「きな子はもう十分っす。
 バックダンサーをしてますから、Liella!ができる最高のライブを見せてください」
🎧「うん……分かった。
 私たちの歌を、聞いてください! 『Starlight Prologue』!」
🐾「スタプロキターーー!」

動画で覚えたダンスに辛うじてついていきながら、きな子は二年生たちの背中を見る。

🦊(まだまだ遠いなあ……)
🦊(でも先輩たちにとっては、これは敗北の曲)
🦊(なのに今は、あんなに楽しそうに歌って踊ってる)
🦊(どんな思い出も、時間とともに継ぎ足されていくんだ)
🦊(その中に今、きな子はいるんだ……)